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萌えとか語りとか
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六日目、とうとう少々遅れましたが8日分の小話更新です。9日分はまた夜に~。

六日目は次男の目線で。
4.暁のわかれ


4 暁のわかれ


隣で眠るその人の髪をそっと撫でる。
柔らかなそれは、この旅の間で少し傷んでしまっているようで、兄のお気に入りである髪に彼女が気を遣っていることを知っているだけに、少し切ない。
どうしてこんな旅を彼女がしなくてはならないのか。
敵国であるこんな場所に落とされたのは、彼女のせいではない。それなのに。
どうしてこんなにも幸福なんだ……俺は。
彼女につらい思いをさせているというのに、それでもなお。
「すまない……」
触れた髪に絡めた指を引き寄せて、その闇色に口付けをする。
「それでも、俺は少しでも」
傍に居たいんだ。
直接に言えない言葉を口の中だけで転がして、そっと髪を離す。
本当に口付けたいのは、髪ではない。
いいや正しくは髪だけではなく、額に、頬に、唇に、肩に、手に、胸に、腹に、足に、すべてに触れたいのだ。
「皮肉だ」
傍にいるときは同じベッドに入って眠ることなど許されなかったのに、決して触れることができなくなってから許されるなんて。
触れたい。けれど触れられない。
そっと手を伸ばし、背を向ける細い肩に触れる。
愛しい彼女はまだ起きる気配もなく、ゆっくりと引くように倒すと仰向けに転がった。まだ起きない。
薄く開き穏やかな寝息を零す唇や、緩やかに上下する胸元、シャツの襟元から覗く首筋。
優しく口付けて俺の証をそこに残せたら、どれほど幸福だっただろう。
目を閉じて、痛むこめかみを指で押さえてベッドの上に起き上がる。
自らの弱さに負けてはいけない。全てを無にしてはいけない。
第一、俺はすべてを自分で壊したのだ。もう決してそんな風に触れることなど許されないだろう。
「……起きてください」
白み始めた空に、眠る人の肩を揺する。
彼女の闇のような黒い瞳が好きだった。今でも好きだ。
だが、今このときだけは、瞼が上がりその闇色が覗く時、微かな失望を覚える。
彼女が目覚める夜明けは、彼女との距離が再び開く、その合図だ。


配布元:TV
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